自己形成概論

人間社会学科の講義を紹介します。木曜日1講目に、自己形成概論という必修の講義があります。講義名をもう少し噛み砕くと、活動を通して自分を見6月26日自己形成概論.jpgつめ、理解を深めるという内容です。学科の教員が毎回入れ替わり立ち代りで担当します。

私は、自分が担当するテキストの第8章を読んで、その内容から教室変更の必要性を感じました。というのも、活動内容が、自分を理解して支えてくれた人を思い浮かべ、その人へ「今私は、」で書き始めて手紙を書くというのです。これはかなり環境をととのえないと成立しない活動です。普段使っている教室から、階段状の大きな教室(5106合同講義室)に変更し、学生間に距離ができるように学生番号で座席を指定しました。左上の写真のとおりです。

 さらに、遅刻してくる学生がいると、静かに書いている学生が集中できないため、開始5分後に教室を施錠して、ドアに「次に開くのは30分後」と張り紙をしました。

 
開始して数分は、誰に手紙を書くか沈思黙考するため、みんなワークシートをじっと見ていました。しばらくして、コツコツとシャープの音が響きはじめます。約20分間、いっさい他者とは関わらず個人活動が続きます。手紙を書いた後、学生は、手紙を書いた後の気持ちを別紙に書きます。これで終わりではありません。
第二の活動に入ります。

 それは、今書いた手紙を読み直し、受けとった人の気持ちになって返信を書くというものです。たとえば、高校時代の先生にあてて手紙を書いたら、次は高校の先生になったつもりで自分へのメッセージを書くのです。私は、テキストを読んだとき、どこまで学生が本気で取り組めるか、正直なところ不安でした。しかし、活動中の学生の表情、そして活動後の実感を書いたものを読む限り、私が予想した以上にこの活動にのめりこんでいた学生が多かったようです。手紙と返信を書いたあとのコメントには次のようなものがありました。

「懐かしい気持ちになった」
「なんだかおだやかな気持ちになった」「泣きたくなった」「友達に会いたくなった」

ここまでが、テキストに設定されている活動です。次に、自分で考えた活動に移りました。タイトルは「私のかばん」です。

今、自分のカバンの中に何が入っているか。その中身をA「明らかに今日使うもの、毎日使うもの、何に使うか目的がはっきりしているもの」と、B「使うかどうかわからないけれど入っている、目的がはっきりしないが入れている、実用性以外の意味があって入っている」とに分け、ワークシート上に書き出します。自分の荷物の、特にBに書いたものを見て、自己分析をする。

 これは私自身が自分のカバンの中身を見て、複雑な心境になったことが背景にあります。

大学から帰るとき、家で読むかもしれないと思って本を持ち帰る。パソコンで何か作業をするかもしれないと思ってUSBのメモリを持ち帰る。しかし、いざ帰宅すると、大学を出るときに思っていた「~するかもしれない」がほとんど忘れ去られている。翌朝、手付かずのまま、また大学でカバンから取り出す。カバンの中に何を入れるか、その中身が、はたして意味のあるものか。そこに、自分の日常生活が反映されていると思ったのです。

 今日、学生にこの活動を実施したところ、なかなか面白い自己分析をしてくれました。

「カバンの中身で自己分析すると、自分で書くのも変だが、頑張り屋だと感じた。毎日重い荷物を持って学校へ通い、物事を学ぶ、とても頑張っていると思うのだが、他人が見たらどういう分析をするだろう」

「もう使わないのに自動車学校の教本が入っている。それは出し忘れだ。家に帰ってもカバンを開けないからで、カバンを開けないということは勉強をしていないからだ。学校に来させてもらっているからにはひとつでも頑張ることを探したい」

「必要最低限の物しか入っていない。人生にたとえると平凡な人生だ。挑戦するわけでもなく、毎日を平凡に暮らす。」

「自分の弁当を見て、一人暮らしなのに弁当をつくるなんてまじめだと思った。」

 自分を見つめる、自分を見つける、そんな活動を主体とした自己形成概論でした。

 

 

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